マンションを売却する時、長く住んでいれば室内はそれなりの使用感もあって、特に荷物を出したあと、このままで売れるのかどうか不安を感じることもあるかもしれません。
そんな時に、リフォームやリノベーションをしてキレイにすれば、高く売れるのでしょうか?
先行して費用がかかるため、リフォーム代が回収できなかったらどうしようとか、不安を感じるかもしれません。
筆者は現在不動産会社の経営者であり、仲介のトップセールスでもありますが、もともとの祖業は買取再販でした。
つまり中古マンションや戸建てを購入して、リフォーム・リノベーションをして、利益を乗せて販売するということを「業」として行っていたのです。
そこで、マンションを売却する時には、この経験と知識が役に立つのではないかと思い、記事にしたいと思います。

リフォーム・リノベーションをして売却すれば高く売れる?
まず多くの人が疑問に思うのは、リフォーム・リノベーションをすれば高く売れるのか?ということではないでしょうか?
ずばり、高く売れます。
実際に中古マンション専門の買取業者も存在し、中古マンションが注目されて、この手の市場も非常に活況です。
ただ利益を出せているのは、「買取価格が安いからではないの?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、買取業者の参入も増え、エンドユーザーにとっても、相場の情報が入りやすくなった今、市場価格とかけ離れたような価格で帰ることは滅多にありません。
ほとんどエンド価格と変わらないような価格で買い取っている業者もあるくらいです。
それでも、買い取ってリフォーム・リノベーションをして、販売をしているということは、それだけ「儲かる」からです。
ただ、なんでもいいからキレイにすればいいわけではありません。
市場が評価をしてくれやすい(価格に反映されやすい)ポイントや効果対費用の高いポイントをしっかり押さえてリフォーム・リノベーションをするからこそ、利益が出るのです。
ここからは高く売れるためのリフォームに必要な知識と注意点についてお伝えしていきます。

大掛かりなリノベーションは避けた方が無難
まず買取再販業者のような、フルリフォームやリノベーションをするのはあまりお勧めできません。
というのも、再販業者は一度だけでなく、何度もリフォームをするので、指定業者がちゃんといて、それなりに安い価格で仕上げることが出来ます。
リフォームやリノベーションの規模が大きくなればなるほど、その価格差が開いていくので、プロであれば利益が出せるものでも、エンドユーザーではそこまで得するかどうかは分からないからです。
要はかけた費用分ほど価格が上乗せされない可能性があります。
リフォーム・リノベーション費用を考えるときは、「リフォーム・リノベーション費用<価格上昇分」が基本です。
また中古マンション市場には「ある程度自分好みにリフォーム・リノベーションをしたい」と考える層も一定数いますので、あまり大掛かりなリフォーム・リノベーションをしてしまうと敬遠されることもあります。

リフォームを考えるべきマンションは?
基本的に私のスタンスは、無用なリフォーム・リノベーションはしなくてもいいというものです。
しかし長年住んだ中古マンションは壁紙が剥がれでいたり、シミや汚れが酷かったりと、一般のエンドユーザーが内覧した時にひいてしまう可能性があります。
ですから、まずリフォームを考えるべきマンションは、あまりにも今の現状だと引いてしまいそうな状況のものです。
あまりにも現状がひどいマンションだと、かなり価格を下げないと売却できない可能性が高まるので、そういった状況を避けるためにリフォームを行います。

費用対効果が高いのは必要最低限のリフォーム
そして費用対効果を考えてリフォームを行うことが、リスクを減らして、売却しやすくするためのポイントです。
費用対効果が高いのは、必要最低限のリフォームです。
壊れている設備などは交換する必要がありますが、水回りなどの設備関係は、リフォーム費用も高くなるので、よほどのことがない限り交換はせず、ハウスクリーニングで十分かと思います。
フローリングの張替えなども、基本的にはしなくても大丈夫です。
逆に見た目の印象が良くなり、比較的安価でリフォームできるのは、壁紙やふすま、畳の表替えなどです。あとはハウスクリーニングで見た目の印象はかなり良く出来ます。
これくらいのリフォームであれば、部屋の広さなどにもよりますが、2~30万円くらいでできるので、比較的やりやすいのではないでしょうか。
水回りのクッションフロアも、費用的に安価で見た目の印象も大きく変わるため、余裕があれば検討してみてもいいと思います。

立地や希少性があれば、大掛かりなリノベーションにもチャレンジできるかも
必要最低限のリフォームで、費用対効果を考えるリフォームの考え方はすべての物件に基本適用できる考え方ですが、よほど立地が良い物件(地下鉄などの主要駅から徒歩4分以内)とか、最上階角部屋などの希少性が高いと思われる物件については、大掛かりなリノベーションやフルリフォームにチャレンジしてみてもいいかもしれません。
なぜならそういった物件であれば、購入を検討する分母が多いからです。
費用対効果を考えたリフォームでは、どちらかと最大公約数を対象に考えていましたが、立地が良かったり希少性の高い物件は、それだけで競争力があるので、多少高くても買ってくれる可能性がある購入希望者が多いということになります。

リフォームやリノベーションをするときの注意点
ご自身でリフォームやリノベーションをするときに、気をつけたいポイントは、「奇抜なデザイン」「個性的なデザイン」「自分好み」を避けることです。
一般的に尖ったデザインは、万人受けしません。そのような感性をもっている方は、自分でリノベーションします。
壁紙のデザインも何の変哲もない白が一番です。間違っても奇抜な色や花柄など、個性的なものを選ばないようにしてください。
ある程度、購入しようとする方にも自由な裁量を残しつつ、見た目で引かないように見た目をきれいにしておくことが、基本姿勢です。
目的は、少しでも早く、高く売れるためであって、自分が住むわけではありません。

少しでも高く売りたいのであればステージングも検討
また少し余裕があれば、ぜひ検討していただきたいのが、ステージングです。
ステージングとは、家具や小物を効果的に使うことで、印象を良くして、価値をあげたり、早く売却が出来るようにする技術のことです。
欧米では一般的なことで、むしろステージングをしないと売れないと考えられているほどです。
日本にもその考え方が一部普及し始めています。あなたもインターネットできれいな室内に家具などが配置してあってオシャレに見える物件を見かけたことがあるのではないでしょうか?
全く何もない室内はガランとしていて、物寂しさもあります。
そして人の目は、広い狭いを判断するときは、何か比べる対象のものが無いと、脳は正確に判断できないと言われています。
ステージングはその脳の習性をうまく活用した技術です。
人は部屋に入った時に必ず最初に見るところがあって、そこをきれいに飾っておくと効果的です。また家具もおしゃれでなくても、広さが分かるように置いておくだけでも違います。
サイズは小さい方が、部屋は広く見えるかもしれません。また緑(ドライフラワーなど)を置くだけでも雰囲気はかなり変わります。
ステージングについてはそれだけで、記事が一本書けますので、また別の機会に説明しようと思います。

リフォームのポイントもいかに見せ方をよくできるか
結局のところ、リフォームにしろステージングにしろ、大切なのは最初の30秒の印象をいかに良く出来るか。これに尽きます。
そしていかに費用をかけずにその体裁を整えることができるかが、少しでも高く売るために必要なスキルでありノウハウです。
購入希望者が見に来た時に、少しでも住んだ後のことがイメージできるように工夫をしてみしょう。
またこれまでに説明してきたポイントは、営業マンのスキルや姿勢を見極めるのにも応用できます。
いくら大手であっても、担当者の質によって売却価格が変わることも十分にあり得るのですが、当社の質はピンキリです。
ですからいくつかの業者に問い合わせておいて、「室内が汚くて売れるかどうかも心配だし、少しでも高く売りたいのだが、どうすればいいか?」という質問をすれば、その回答によって取捨選択ができるのではないでしょうか。
そういった意味でも、不動産仲介業者への問い合わせは複数社にするようにしましょう。