自宅を売却する理由として、一番多いのは「住み替え」です。
理由は転勤であったり、子供が自立したなどの家族構成の変化であったり、人それぞれです。
すでに住宅ローンを払い終わっていれば、自由に住み替えも出来ますが、中には現在住んでいる家の住宅ローンの残債がまだある状況の方もいると思います。
この記事では住宅ローンが残っている状態で住み替えをしたいと考えている方を対象に、注意すべきポイントや考えられる方法など、プロの視点でお伝えしていきます。
住み替えには二つの方法がある

あっくん

ミナ
あ、社長、お帰りなさい。どうでしたか?今日のお客さんは。

あっくん
具体的に家を購入したいって方なんだけど「住み替え」なんだよね。

ミナ

あっくん
そう。その自宅にはまだ住宅ローンが残っていてね。その打ち合わせをしてきたんだ。

ミナ
住宅ローンが残ってると、住み替えの時ってどうなるんですか?

あっくん
そうだね。まず買い先行でいくか、売り先行で行くかを決めなきゃいけないね。
住み替えの時に、先に転居先の住宅を購入してから住んでいた住宅を売却をすることを「買い先行」と言います。逆に今住んでいる住宅を売却してから、次の住み替え先を購入することを買い先行と言います。
買い先行と売り先行はどちらが有利か
買い先行と売り先行には、それぞれメリット・デメリットがあります。ここからはそれぞれについて詳しくお話していきたいと思います。
買い先行のメリット・デメリット

ミナ
住宅ローンが残っている時って、なかなか大変そうですよね。

あっくん
そうだね。どちらにしろメリット・デメリットがあるからね。

ミナ
ちなみに買い先行はどんなメリット・デメリットがあるんですか?

あっくん
買い先行のメリットは、何といってもゆっくり住み替え先を探すことが出来ることだろうね。また引っ越しが1回ですむのもメリットかな。

ミナ
確かに良い物件をじっくり探したい人には向いているかもしれませんね。逆にデメリットは何ですか?

あっくん
買い先行の一番大きなデメリットはダブルローンになってしまうことなんだ。
買い先行はダブルローンに注意

ミナ
ダブルローンというのは、今の住宅ローンと、新しい住宅ローンの支払いが二重に発生するというやつですよね。

あっくん
そう。二重ローンになってしまうから、月々の支払いが苦しくなるし、苦しいから売却も急いで安い価格になることもある。

ミナ
私だったら結構耐えられないな~。でも世の中には二重ローンでも大丈夫な人もいますよね。支払い能力があれば買い先行の方がいい気がしますね。

あっくん
それがそうでもないんだ。実は住み替えの時、買い先行の住宅ローンを取り扱っている銀行って実は結構少ないんだよね。

ミナ
え、そうなんですか?あんまり深く考えたこともなかったですが。。。

あっくん
昔はそうでもなかったんだけど、最近は売れない期間が続いて支払い能力が低下してしまうリスクがあるから、今の住宅の契約が決まっていないと審査を受け付けてくれないところもあるんだ。仮にあったとしても、支払い能力が通常の二倍近くないとダメだったりとかして審査が厳しいことが多いんだ。

ミナ
考えてみれば銀行からしてみたら確かにリスクありますもんね。ちなみに社長はそういう時はどうしているんですか?
買い先行でも使える住宅ローンは?

あっくん
フラット35は国土交通省と財務省が運営している住宅支援機構というところが貸出しをしている住宅ローンです。一般的な銀行が「人を見て貸す」と言われるのに対してフラット35は「物件を見て貸す」と言われています。

あっくん
フラット35であれば、住宅ローンの残債があっても、仲介業者との媒介契約書(売却を依頼した時に締結する契約書)があれば、今の住宅ローンは無いものとして審査してくれるんだ。

ミナ

あっくん
そう。だから買い先行の時は重宝するんだよね。ただし、物件の審査があるからフラット35の検査に受かる物件であることが条件だけどね。
買い先行で住み替えを進めたいときは、新しい住宅ローンはフラット35を検討してみるとスムーズに進めることが出来ます。
セカンドハウスローンという手もあるが・・

あっくん
あともう一つ住み替えの時に検討できる住宅ローンに「セカンドハウスローン」という商品があるんだ。

ミナ
名前からすると、二件目用のローンということですよね?

あっくん
そう。もちろん審査はその分厳しくなるけど、住宅ローンがすでにあることが前提になっているから審査に通れさえすれば利用できるんだ。

ミナ

あっくん
もちろん限られてはいるけど、僕が良く使うところだと、フラット35はもちろんみずほ銀行やイオン銀行なんかが割といい条件でやってくれるね。

ミナ
それだったら、あえて買い先行の住宅ローンじゃなくてもいい気がしませんか?

あっくん
確かにそうかも言しれないけど、一応気を付けたいこともあって、住宅ローン減税が利用できないんだ。

ミナ

あっくん
もちろん。だから、今の住宅を売るつもりがない場合転勤などの理由)で、住み替え先で購入したいとか、単身赴任で購入するときなんかは結構使えるんだ。
通常の住宅ローンに加えてセカンドハウスローンという商品もありますが、どれを選べば有利かは仲介業者にも相談してみましょう。
売り先行のメリット・デメリット

ミナ

あっくん
実際多いのは売り先行なんだけど、やはり二重ローンが発生しないというメリットがあるんだ。

ミナ
住みながら売却しているのが、売り先行の物件っていうことですよね?

あっくん
そうだね。住みながら売却をして、売れたら次の物件を探すんだ。

ミナ

あっくん
そういうケースもあるけど、一般的には契約を少し長めの引渡し期間を設けてもらって、その間に次の引っ越し先を決める方が多いんだ。

ミナ
そうすると、かなり限られた期間で次の物件を見つけなければいけないということですね。

あっくん
売り先行のデメリットはそこだね。時間が限られているから本当に気に入る物件に出会えるかどうかが分からないんだ。だから結局見つからずに、一度賃貸に引っ越すこともあり得る話なんだ。

ミナ
本当に買い先行にも、売り先行にもメリット・デメリットがありますね。
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買い先行 |
売り先行 |
メリット |
- ゆっくり物件を探すことが出来る
- 空き家として販売できる
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デメリット |
- 住宅ローンの残債がダブルローンになる
- 取り扱い金融機関が限られる
- 急ぐので売却価格が安くなってしまうことも
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- 売却が決まるまで、購入できない
- 住み替え先を探す期間がかなり限られる
- 見つからなければ一度賃貸に引っ越すなど、余分な手間が発生する
- 住みながら売却するので、色んな人が内覧しにくる
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あっくん
そうだね。状況によってどちらがいいかは大きく変わってくるから、その辺も不動産仲介業者と一緒に相談しながら戦略を決めた方がいいかな。
買い先行が有利か、売り先行が有利かはその人の状況によって変わります。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、どちらが最適なのか、不動産仲介業者と一緒に考えましょう。
今の家に住みながら家を売却することも出来る?

あっくん
最近は色々新しい方法も出てきていて、ハウスリースバックという言葉をしっているかい?

ミナ

あっくん
たしかに比較的最近出てきたサービスだからあまり知らないかもしれないね。
ハウスリースバックは今の住宅をいったん売却して、その売却先から再度賃貸するという手法です。売却先は主に不動産会社になりますが、家賃を払うことで住み続けることができ(会社によっては期間が設けられているところもあります)、引っ越すことなく次の住み替え先をゆっくり探すことが出来るというサービスです。住み替え以外にも老後の生活資金獲得などの目的でも利用出来ます。

ミナ

あっくん
そうだね。売り先行と買い先行のいいところ取りのような内容だから、一度どれくらいの査定になるか、問い合わせて見る価値はあると思うだよね。

ミナ
そんなサービスがあるなら一度話だけでも聞いてみる価値はありそうね。住み替えで失敗したくないなら、色んな方法を考えた方が有利よね。
ハウスリースバックは最大手のHOUSEDoがお勧めです


住み替えについてのQ&A
住み替えについては、色んな質問を受けることがよくあります。またネット上で誤っていると思われる情報もあったりするので、色々とお伝えしていきたいと思います。
今の家に賃貸に出すのは?
よく今の住宅ローンは組んだまま、賃貸に出して、新しく住宅ローンを組んだらどうかと聞かれることがあります。
少しグレーな話になりますが、住宅ローンはあくまで本人が住むために作られた特別なローンです。
ほとんどの金融機関で、住宅ローンを組んでいる物件を賃貸に貸し出すことを禁止しています。
金融機関によって多少温度差はありますが、最近はそういった行為に対して厳しくなってきており、借りるときに念書を書かされることがあります。
また黙ってても、銀行からの郵便物はだいたい転送不要の書類で届くので、後からバレてしまった時には、残債額の一括返済を求められるリスクもあります。
もし賃貸に出す場合は、必ず銀行に事前に相談するようにしてください。
奥さんの名義で新しく住宅ローンを組むのは?
今の住宅ローンはご主人名義で組んでいる場合で、奥様にも安定した収入があり、奥様の名義で住宅ローンを借りて、今の住宅ローンを組んだまま賃貸に貸し出しては?ということも聞かれます。
しかしながら、住宅ローンを組むときには、かならず住民票を移動させることが必要になります。
別居するのであれば、それぞれが住宅ローンを組んでも構いませんが、結局今の住宅を貸すのであれば、書類が届かなくなり銀行にバレて、違約を問われるリスクがあります。
この場合も元の銀行に相談をして、住宅ローン以外のローンで組みなおすか、売却してしまうしかありません。
ただし、今の借り入れ金融機関によって姿勢は変わってきますので、銀行に問い合わせるか、不動産仲介業者に依頼するのであれば、そのあたりも合わせて相談するようにしてみてください。
最後に
住み替えは、購入と売却を短い期間で行うことから、特有の難しさがあります。
買い先行で動くか、売り先行で動くか、状況によっても変わってきます。
それぞれのメリットを把握したうえで、ご自身にとって有利な方法を選ぶようにしてください。
また文中でご紹介した「ハウスリースバック」という新しい住み替えの方法もあります。色々なところの話や査定を比べてご自身にとって納得のいく選択ができるようにしていただければと思います。